シェーグレン症候群 — 目や口の乾きの背景を調べ、長期に管理する(専門医監修)
シェーグレン症候群とは
シェーグレン症候群は、本来は体を守るはずの免疫が、誤って自分自身の涙腺(涙をつくる器官)や唾液腺(唾液をつくる器官)を攻撃してしまう自己免疫疾患です。攻撃を受けた腺に慢性的な炎症が起こり、涙や唾液が十分につくられなくなることで、目や口の乾きが続きます。膠原病(自己免疫疾患の総称)のひとつで、2015年からは国の指定難病に登録されています。
日本では、指定難病として登録されている患者数は約7万人と報告されていますが、乾燥症状が軽く受診や診断に至っていない潜在的な患者を含めると、実際にはその数倍にのぼると考えられています。男女比はおよそ1対17と女性に圧倒的に多く、発症のピークは40〜60代とされます。
シェーグレン症候群は、他の膠原病を合併せず単独で起こる「一次性」と、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど他の膠原病に伴って起こる「二次性」に分けられます。目や口の乾きが中心の病気ですが、全身の免疫の異常を背景とするため、疲労感や関節の痛みといった全身の症状をともなうこともあります。
症状
シェーグレン症候群の代表的な症状は、目の乾き(ドライアイ)と口の乾き(ドライマウス)です。目では、ゴロゴロする、しょぼしょぼする、疲れる、目が開けにくいといった症状が現れます。口では、乾いて話しにくい、食べ物が飲み込みにくい、味を感じにくい、虫歯が増えるといった症状につながることがあります。
乾きの症状以外にも、次のような全身の症状がみられることがあります。
- 疲れやすさ・倦怠感
- 関節の痛み
- 唾液腺(耳の下やあごの下)の腫れ
- 皮膚の乾燥・かゆみ
- レイノー現象(寒さやストレスで指先が白や紫に変わる)
- 微熱
これらの症状は、加齢や薬の影響、環境などによる乾燥でも起こるため、シェーグレン症候群かどうかは検査による評価が必要です。
なぜ内科での評価が役立つのか
目や口の乾きは、多くの場合、目薬や口腔ケアなど、その場の症状をやわらげる対応で様子をみられます。しかし、点眼薬を使っても目の乾きが十分に改善しない、口腔ケアをしても口の乾きが続く、といった場合には、乾燥の背景にシェーグレン症候群のような全身の病気が隠れていることがあります。
シェーグレン症候群は、目や口だけの問題ではなく、全身の免疫の異常を背景とする病気です。診断には血液検査による自己抗体の評価が重要で、また関節リウマチなど他の膠原病の合併や、肺・腎臓などの合併症の有無を確認するうえでも、全身を総合的にみる内科での評価が役立ちます。乾燥の症状が続くときは、目や口それぞれの対応に加えて、背景を調べることが、その後の適切な管理につながります。
診断・検査
シェーグレン症候群には、これ一つで確実に診断できるという単独の検査がなく、複数の検査を組み合わせて総合的に診断します。日本では、厚生省の改訂診断基準(1999年)が広く用いられており、次の4つの分類のうち2項目以上を満たすとシェーグレン症候群と診断されます。
| 検査の分類 | 内容 |
|---|---|
| 病理組織検査 | 口唇の小唾液腺、または涙腺の生検で、リンパ球の浸潤などの陽性所見がみられる |
| 口腔の検査 | 唾液腺造影で陽性、またはガム試験・サクソン試験で唾液分泌の低下がみられ、かつ唾液腺シンチグラフィで機能低下がみられる |
| 眼の検査 | シルマー試験で涙の分泌低下がみられ、かつローズベンガル試験または蛍光染色試験で陽性 |
| 血液検査 | 抗SS-A抗体、または抗SS-B抗体が陽性 |
血液検査では、シェーグレン症候群に特徴的な抗SS-A抗体・抗SS-B抗体のほか、抗核抗体やリウマトイド因子、免疫グロブリン(ガンマグロブリン)などを調べます。目の乾きに対してはシルマー試験(まぶたに試験紙をはさみ、一定時間後に染み込んだ涙の量を測る検査)などを、口の乾きに対してはガムを噛んで分泌される唾液量を測るガム試験(ガムテスト)やサクソン試験などを行います。全身の合併症を調べるために、肺のレントゲンやCT、腎臓の評価のための尿検査などが行われることもあります。
診断基準は診断に有用な目安ですが、他の病気(加齢による唾液分泌の低下、薬の影響による乾燥、糖尿病による口の渇き、IgG4関連疾患など)との見分けが重要であり、実際の診断は一人ひとりの状態をふまえて医師が判断します。
治療と長期管理
シェーグレン症候群は、免疫の異常そのものを取り除く治療は難しいため、乾きの症状をやわらげる対症療法と、全身の合併症を管理する長期のフォローが治療の柱となります。
目の乾きに対しては、人工涙液やヒアルロン酸の点眼、涙の分泌や角膜の状態を改善する点眼薬(ジクアホソルナトリウム、レバミピドなど)が用いられます。口の乾きに対しては、唾液の分泌を促す内服薬(セビメリン、ピロカルピンなど)や人工唾液、こまめな水分補給、口腔ケアで対応します。虫歯が増えやすいため、歯科での定期的なケアも大切です。
乾燥の症状にとどまらず、関節の症状が強い場合や、肺・腎臓などに炎症が及ぶ場合には、状態に応じてステロイドや免疫抑制薬が用いられることもあります。シェーグレン症候群は長期にわたって付き合っていく病気で、多くの方は乾燥症状以外の臓器の障害がないか、あっても軽度ですが、まれに間質性肺炎やリンパ腫などの合併症がみられることがあるため、定期的な通院と検査による経過の確認が重要です。指定難病に登録されており、重症度などの条件を満たす場合には、申請により医療費の助成を受けられることがあります。
経過・予後と合併症の注意
シェーグレン症候群は、多くの場合、経過は比較的安定しており、乾燥症状と付き合いながら日常生活を続けられる病気です。一方で、長い経過の中で、間質性肺炎、腎臓の障害、末梢神経の障害、そしてまれにリンパ腫といった合併症が現れることがあります。これらを早期に見つけて対応するために、症状が落ち着いている時期も含めて、定期的な評価を続けることが大切です。
また、抗SS-A抗体が陽性の方が妊娠する場合には、まれに胎児に影響(新生児ループスなど)が及ぶことがあるため、妊娠を考える際には主治医に相談し、産科などと連携しながら管理することがすすめられます。
日常生活での注意点
シェーグレン症候群そのものを予防する方法は確立されていませんが、乾燥による不快感や合併症を減らすために、日常生活で意識できることがあります。
- 目の乾きには点眼薬をこまめに使い、エアコンの風が直接当たらないようにする
- 口の乾きにはこまめな水分補給を心がけ、乾燥した環境を避ける
- 虫歯・歯周病を防ぐため、歯科での定期的なケアを受ける
- 部屋の湿度を保ち、皮膚の乾燥には保湿を心がける
- 定期的に通院し、乾燥症状だけでなく全身の状態も確認する
受診の目安
次のような症状が続く場合は、乾燥の対応に加えて、背景を調べるために内科で相談することがすすめられます。
- 点眼薬を使っても目の乾き・異物感が改善しない
- 口の乾きが続き、話しにくい・飲み込みにくい・虫歯が増えた
- 目や口の乾きに、疲労感や関節の痛みが加わっている
- 耳の下やあごの下(唾液腺)の腫れがある
- すでに関節リウマチなど他の膠原病があり、目や口の乾きが出てきた
診療ガイドライン・出典
このページの記載は、厚生省の改訂診断基準(1999年)、シェーグレン症候群診療ガイドライン2017年版、および厚生労働省 難病情報センターなどの情報に準拠しています。シェーグレン症候群は2015年から指定難病に登録されています。診断・治療の考え方は今後の研究により見直されることがあり、実際の診断・治療は一人ひとりの状態に応じて医師が判断します。
よくあるご質問
- 目や口が乾くのは、すべてシェーグレン症候群ですか?
- いいえ、目や口の乾きは、加齢による涙・唾液の分泌の低下、薬の副作用、乾燥した環境、糖尿病など、さまざまな原因で起こります。シェーグレン症候群はそのうちの一つで、自己免疫の異常を背景とします。点眼薬や口腔ケアで十分に改善しない乾きが続く場合や、疲労感・関節の痛みなどをともなう場合には、血液検査などで背景を調べることがすすめられます。
- シェーグレン症候群は何科を受診すればよいですか?
- 目や口の乾きから眼科・歯科を受診されることが多い病気ですが、シェーグレン症候群は全身の免疫の異常を背景とするため、診断には血液検査による自己抗体の評価が重要です。他の膠原病の合併や、肺・腎臓などの合併症の有無を確認するうえでも、全身を総合的にみる内科での評価が役立ちます。
- どのような検査で診断しますか?
- シェーグレン症候群には単独で確実に診断できる検査がなく、複数の検査を組み合わせて総合的に診断します。血液検査で抗SS-A抗体・抗SS-B抗体などの自己抗体を調べ、目の乾きにはシルマー試験、口の乾きにはガム試験やサクソン試験を行います。必要に応じて口唇の小唾液腺の生検を行うこともあります。日本では、これらの検査項目のうち2項目以上を満たすと診断される診断基準が用いられています。
- シェーグレン症候群は治りますか?
- 免疫の異常そのものを取り除く治療は難しいものの、乾きの症状をやわらげる点眼薬や唾液分泌を促す薬などの対症療法で、症状を和らげながら日常生活を続けることができます。多くの方は経過が比較的安定していますが、まれに間質性肺炎やリンパ腫などの合併症が現れることがあるため、定期的な通院と検査で経過を確認していくことが大切です。
- 関節リウマチと関係がありますか?
- シェーグレン症候群は、関節リウマチなど他の膠原病に合併して起こることがあり、この場合は「二次性」と呼ばれます。関節リウマチの患者さんの一部にシェーグレン症候群の合併がみられることが知られています。すでに関節リウマチなどの膠原病がある方で、目や口の乾きが新たに出てきた場合には、シェーグレン症候群の合併も含めて評価することがすすめられます。
出典
監修・編集体制
編集:医承会グループ 医療情報編集委員会
監修:篠﨑 美樹子日下診療所 副院長
- 日本内科学会認定内科医
- 日本リウマチ学会専門医
- 日本医師会認定産業医
最終監修日:2026年7月
関連する疾患
この疾患を診療している医承会グループのクリニック
シェーグレン症候群の診療は、医承会グループの以下のクリニックで受けられます。