アレルギー性鼻炎(花粉症)— 症状・原因・検査・治療と、根本的な体質改善をめざす舌下免疫療法の解説
アレルギー性鼻炎(花粉症)とは
アレルギー性鼻炎は、空気中のアレルゲン(アレルギーの原因物質)が鼻の粘膜に触れることで、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどが起こる病気です。鼻の粘膜が特定の物質に過敏に反応し、体を守る免疫の仕組みが過剰にはたらくことで症状が現れます。
アレルギー性鼻炎は、原因や症状の出る時期によって、大きく次のように分けて考えます。
- 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症): スギ・ヒノキ・イネ科・ブタクサなど、特定の季節に飛ぶ花粉が原因。決まった時期に症状が出る
- 通年性アレルギー性鼻炎: ダニ・ハウスダスト・ペットの毛など、一年を通して身のまわりにあるものが原因。季節を問わず症状が続く
2024年に改訂された診療ガイドラインでは、これらに加えて、検査では原因がはっきりしないのに鼻の粘膜の中だけでアレルギー反応が起きる「局所アレルギー性鼻炎」や、特定の職業環境が関わる「職業性アレルギー性鼻炎」といったタイプも整理されています。日本では国民の多くが何らかのアレルギー性鼻炎をもつとされ、花粉症の有病率は近年も増加が指摘されています。
アレルギー性鼻炎の症状
アレルギー性鼻炎の代表的な症状は、くしゃみ・水のようなさらさらした鼻水・鼻づまりの三つです。これらは「くしゃみ・鼻漏型」と「鼻閉型」といった形で、人によって出方が異なります。
- 発作的に何回も続くくしゃみ
- 水のようにさらさらした鼻水(透明・多量)
- 両側の鼻づまり
- 目のかゆみ・涙目・充血(とくに花粉症で多い)
- のどや耳の奥のかゆみ、皮膚のかゆみ
- 鼻づまりによる集中力の低下・睡眠の質の低下・口呼吸
かぜの鼻水が数日から一週間ほどでおさまるのに対し、アレルギー性鼻炎では透明な鼻水やくしゃみ・かゆみが、原因に触れているあいだ続くのが特徴です。鼻づまりが強いと、睡眠や日中の活動、お子さまでは学習や成長にも影響することがあります。
アレルギー性鼻炎の原因
アレルギー性鼻炎は、原因となるアレルゲンに対して体が過剰な免疫反応を起こすことで生じます。代表的なアレルゲンには次のようなものがあります。
- 花粉: スギ・ヒノキ・イネ科植物・ブタクサ・ヨモギなど(飛ぶ時期がアレルゲンごとに異なる)
- ダニ・ハウスダスト: 室内のちりやダニの死がい・ふんなど(通年性の主な原因)
- ペットの毛・フケ、カビ など
アレルゲンが鼻の粘膜に付着すると、体内でつくられたIgE抗体を介して反応が起こり、ヒスタミンなどの物質が放出されて、くしゃみ・鼻水・鼻づまりが引き起こされます。複数のアレルゲンをあわせもつ人も多く、季節性と通年性が重なって症状が出ることもあります。
アレルギー性鼻炎の検査・診断
アレルギー性鼻炎の診療では、いつ・どのような症状が出るかを丁寧にうかがい、鼻の粘膜の状態を確認したうえで、原因となるアレルゲンを調べていきます。
- 問診: 症状の出る時期・きっかけ・生活環境・家族のアレルギー歴などを確認する
- 鼻鏡・鼻内視鏡: 鼻の粘膜の腫れや色、鼻水の性状を観察する
- 血液検査(特異的IgE抗体検査): どのアレルゲンに反応しているかを血液で調べる
- 皮膚テスト・鼻汁好酸球検査 など: 必要に応じてアレルギーの傾向を確認する
原因アレルゲンを特定することは、症状を抑える治療だけでなく、後で述べる舌下免疫療法など根本的な治療を検討するうえでも重要です。とくに舌下免疫療法を行う際には、検査による確定診断が前提となります。
アレルギー性鼻炎の治療(対症療法)
アレルギー性鼻炎の治療は、大きく「原因を避ける(アレルゲンの除去・回避)」「症状を抑える(薬物療法)」「体質を変える(アレルゲン免疫療法)」「手術」に分けられます。多くの場合、原因の回避と薬物療法を組み合わせて症状をコントロールします。
- アレルゲンの除去・回避: 花粉の時期のマスクや室内対策、ダニ対策の掃除・寝具の手入れなど
- 抗ヒスタミン薬(内服): くしゃみ・鼻水に広く用いられる中心的な薬
- 鼻噴霧用ステロイド薬: 鼻づまりを含む幅広い症状に効果が高く、局所で作用する
- ロイコトリエン受容体拮抗薬など: 鼻づまりが強いタイプに用いられる
- 重症の花粉症に対する生物学的製剤(抗IgE抗体)など: 一定の条件を満たす場合に検討される
花粉症では、症状が出てからではなく、花粉が飛び始める少し前から薬を始める「初期療法」が、シーズン中の症状を軽くするうえで役立つとされています。これらの薬物療法は症状をやわらげる治療であり、やめると再び症状が出ることが多いという特徴があります。
舌下免疫療法(アレルギーの体質改善をめざす治療)
舌下免疫療法は、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を含むお薬を少量から毎日続けて体に取り入れ、その物質に体を慣らしていくことで、アレルギー反応そのものを起こしにくい体質へと変えていく治療です。症状を一時的に抑える対症療法とは異なり、アレルギー性鼻炎の根本的な改善・長期的な症状の軽減をめざせる治療として位置づけられています。
アレルゲンを体に取り入れる方法には、皮下に注射する皮下免疫療法(SCIT)と、舌の下にお薬を置いて吸収させる舌下免疫療法(SLIT)があります。舌下免疫療法は自宅で服用でき、注射の痛みがなく、重い全身反応のリスクが比較的低いことから、近年広く行われるようになっています。
日本で舌下免疫療法の対象となるのは、検査でスギ花粉症またはダニによる通年性アレルギー性鼻炎と確定診断された方です。スギにはシダキュア、ダニにはミティキュアという、口の中で溶ける錠剤が用いられます。いずれも5歳以上のお子さまから大人まで使用でき、お子さまでも続けやすい治療です。
- 対象: 検査でスギ花粉症またはダニアレルギーと確定診断された方(5歳以上の小児〜成人)
- 薬剤: スギ=シダキュア、ダニ=ミティキュア(いずれも舌下で溶ける錠剤)
- 開始時期: スギ(シダキュア)は花粉の飛散期には始められず、シーズンが終わってから開始する。ダニ(ミティキュア)は時期を問わず開始できる
- 治療期間: おおむね3〜5年の継続が目安。長く続けるほど効果が安定しやすいとされる
治療は、最初の数日〜1週間ほどを少ない量から始め、その後は決められた維持量を毎日続けます。初めて服用する日は、まれに起こる強い反応に備えて医療機関で一定時間ようすをみることが一般的です。その後は定期的に通院しながら、効果や副作用を確認して治療を続けます。
副作用として、服用後に口の中のかゆみや腫れ、のどの違和感などが出ることがありますが、多くは軽く、続けるうちにやわらいでいくことが知られています。重い全身反応はまれですが、ぜんそくのコントロールが不安定な方や、一部の持病・お薬のある方では行えないことがあります。妊娠・持病の有無などを含め、治療できるかどうかは医師の診察のうえで判断します。
手術による治療
薬物療法で十分にコントロールできない強い鼻づまりに対しては、鼻の粘膜をレーザーなどで処置して反応を抑える方法や、鼻の構造に対する手術が検討されることがあります。手術が適しているかどうかは、症状の程度やタイプ、これまでの治療経過をふまえて判断されます。
セルフケアと日常の工夫
- 花粉の時期は、外出時のマスク・メガネ、帰宅時の花粉の払い落とし、窓の開閉や洗濯物の工夫などで花粉を避ける
- ダニ・ハウスダストが原因の場合は、こまめな掃除、寝具の手入れ、室内の湿度管理などが役立つ
- 鼻づまりが強いときは、市販薬の点鼻薬を長く使い続けると、かえって鼻づまりが悪化することがあるため、使い方に注意する
- 症状が続く・市販薬で十分に抑えられないときは、自己判断を続けず耳鼻咽喉科に相談する
受診の目安
市販薬で十分に症状が抑えられない、鼻づまりで眠れない・集中できない、毎年決まった時期につらい症状をくり返す、根本的な体質改善(舌下免疫療法)を検討したい——このようなときは、耳鼻咽喉科への受診をおすすめします。原因アレルゲンを調べ、症状やライフスタイルに合った治療を選んでいくことが、長期的な症状の安定につながります。
ガイドライン・参考情報
本ページは、耳鼻咽喉科領域の診療ガイドラインや公的機関の情報をもとに、耳鼻咽喉科専門医の監修のうえで作成しています。診断・治療の最終的な判断は、必ず医師による診察に基づいて行われます。
よくあるご質問
- アレルギー性鼻炎と、かぜの鼻水はどう違いますか?
- かぜの鼻水は数日から一週間ほどでおさまり、はじめは透明でも次第に粘り気が出て、発熱やのどの痛みをともなうことがあります。アレルギー性鼻炎では、水のようにさらさらした透明な鼻水・発作的なくしゃみ・目や鼻のかゆみが、原因に触れているあいだ続くのが特徴です。毎年決まった時期にくり返す場合は、花粉症の可能性があります。
- 花粉症の薬は、症状が出る前から飲んだほうがよいですか?
- 花粉症では、症状が出てからではなく、花粉が飛び始める少し前から薬を始める「初期療法」が、シーズン中の症状を軽くするうえで役立つとされています。前年につらい症状があった方は、早めに耳鼻咽喉科で相談しておくとよいでしょう。
- 舌下免疫療法とはどんな治療ですか?ふつうの薬と何が違いますか?
- 舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質を少量から毎日体に取り入れ、その物質に体を慣らしていくことで、アレルギー反応そのものを起こしにくい体質へ変えていく治療です。症状を一時的に抑えるふつうの薬(対症療法)と違い、根本的な改善・長期的な症状の軽減をめざせるのが特徴です。スギ花粉症・ダニアレルギーが対象で、舌の下で溶ける錠剤を用います。
- 舌下免疫療法は何歳から受けられますか?子どもでも大丈夫ですか?
- スギ(シダキュア)・ダニ(ミティキュア)いずれも5歳以上のお子さまから大人まで使用できます。口の中で溶ける錠剤で、注射の痛みがなく自宅で続けられるため、お子さまでも取り組みやすい治療です。治療を始める前には、検査による確定診断が必要です。
- 舌下免疫療法はいつから始められますか?どのくらい続けますか?
- スギ(シダキュア)は花粉の飛散期には始められず、シーズンが終わってから開始します。ダニ(ミティキュア)は時期を問わず始められます。治療期間はおおむね3〜5年の継続が目安で、長く続けるほど効果が安定しやすいとされています。
- 舌下免疫療法に副作用はありますか?誰でも受けられますか?
- 服用後に口の中のかゆみや腫れ、のどの違和感などが出ることがありますが、多くは軽く、続けるうちにやわらぐことが知られています。重い全身反応はまれですが、ぜんそくのコントロールが不安定な方や、一部の持病・お薬のある方では行えないことがあります。妊娠・持病の有無を含め、治療できるかどうかは医師の診察のうえで判断します。
- アレルギー性鼻炎は完全に治りますか?
- 薬物療法は症状をやわらげる治療で、やめると再び症状が出ることが多くあります。舌下免疫療法は体質そのものの改善をめざす治療で、根本的な改善や長期的な症状の軽減が期待できますが、すべての方に同じ効果が出るわけではありません。原因や症状に応じて、適した治療を選んでいくことが大切です。
出典
監修・編集体制
編集:医承会グループ 医療情報編集委員会
監修:早坂 あかね駒込駅前耳鼻咽喉科クリニック 駒込駅前耳鼻咽喉科クリニック 院長
- 耳鼻咽喉科専門医
- 身体障害者福祉法15条指定医
- 補聴器相談医
最終監修日:2026年6月
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