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中耳炎(急性中耳炎・滲出性中耳炎)— 症状・原因・検査・治療の解説

中耳炎とは

中耳炎は、鼓膜の奥にある「中耳」という空間に炎症が起こった状態の総称です。子どもに多い病気として知られますが、大人にも起こります。

耳は、外側から外耳・中耳・内耳に分けられます。中耳は鼓膜のすぐ奥にある空間で、「耳管(じかん)」という細い管を通じて鼻やのどの奥とつながっています。耳管には、中耳の換気をして圧を調整し、たまった分泌物を排出する働きがあります。かぜなどで鼻やのどに炎症が起こると、そこにいる細菌やウイルスが耳管を通って中耳に入り込み、炎症や分泌物の貯留が生じます。これが中耳炎です。

中耳炎は、起こり方や続く期間によっていくつかのタイプに分けて考えます。

  • 急性中耳炎: かぜなどに続いて急に起こり、耳の痛み・発熱・耳だれをともなうもの
  • 反復性中耳炎: 急性中耳炎を短期間にくり返すもの(おおむね半年で三回以上、または一年で四回以上)
  • 滲出性中耳炎: 痛みや発熱は目立たず、中耳に分泌物(滲出液)がたまって聞こえにくくなるもの
  • 慢性中耳炎(慢性穿孔性中耳炎): 鼓膜に穴(穿孔)が残り、耳だれや難聴をくり返すもの
  • 真珠腫性中耳炎: 鼓膜の一部が中耳側に入り込んで角化物がたまり、まわりの骨を壊しながら進むもの

もっとも多いのは急性中耳炎と滲出性中耳炎で、この二つは続けて起こることもあります。タイプによって症状も治療の考え方も異なるため、どのタイプかを見極めることが大切です。

中耳炎の症状

中耳炎の症状は、急性か滲出性かによって大きく異なります。

急性中耳炎では、次のような症状が急に現れます。

  • 耳の痛み
  • 発熱
  • 耳だれ(鼓膜が破れて膿が出ることがある)
  • 聞こえにくさ・耳のつまり感
  • 乳幼児では、機嫌が悪い・泣く・耳に手をやる・眠りが浅いといった様子で気づかれることがある

滲出性中耳炎では、痛みや発熱は目立たず、聞こえにくさが中心になります。本人が訴えないまま続くことも多く、周囲が気づくきっかけは次のようなものです。

  • 聞き返しが多い・呼びかけへの反応が鈍い
  • テレビやゲームの音を大きくする
  • 耳がつまった感じ・自分の声が響く感じ
  • 言葉の覚えがゆっくりに感じられる(乳幼児)

小さなお子さまは症状をうまく言葉にできないため、聞こえ方や様子の変化に周囲が気づくことが、早い対応につながります。

中耳炎の原因・リスク要因

中耳炎は、鼻やのどにいる細菌やウイルスが耳管を通って中耳に入り、炎症を起こすことで生じます。原因となる細菌では、肺炎球菌やインフルエンザ菌などが知られています。子どもに多いのは、耳管が大人より短く水平に近いため、鼻やのどの病原体が中耳へ届きやすいことが一因とされています。

起こりやすさや長引きやすさには、次のような要因が関わります。

  • かぜなどの上気道炎をきっかけに起こること
  • 乳幼児で耳管の働きがまだ十分に発達していないこと
  • アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・アデノイド(咽頭扁桃)の腫れなど、鼻やのどの慢性的な炎症・通気の悪さ
  • 集団保育、家庭内の受動喫煙、おしゃぶりの使用など

滲出性中耳炎は、急性中耳炎が治りきらずに分泌物が残る場合や、アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・アデノイドの腫れなどで耳管の換気が妨げられる場合に起こりやすくなります。背景にこうした鼻・のどの状態があるときは、その治療もあわせて考えていきます。

似た病気との見分け(鑑別)

耳の痛みや聞こえにくさは、中耳炎以外の原因で起こることもあります。鼓膜の状態を直接確認しながら、次のような病気との違いを見極めます。

中耳炎と紛らわしい主な状態
状態見分けの手がかり
外耳炎耳の入り口から鼓膜までの外耳道の炎症。耳を引っぱる・押すと痛みが強まりやすい
耳あかのつまり(耳垢栓塞)耳がつまる・聞こえにくいが、痛みや発熱はないことが多い
航空性中耳炎・気圧の変化による耳の不調飛行機の離着陸やダイビングなど、気圧の変化に関連して起こる
突発性難聴など内耳の病気片側の急な難聴・耳鳴り・めまいでは、中耳ではなく内耳の病気を考える必要がある

中耳炎の検査・診断

中耳炎の診療では、症状や経過をうかがったうえで、鼓膜の状態を直接確認することを重視します。

  • 問診: いつから、どのような症状が、どのくらい続いているか、かぜやアレルギーの有無、これまでの経過を確認する
  • 鼓膜の観察: 耳鏡・顕微鏡・内視鏡で鼓膜の赤み・ふくらみ・穿孔・滲出液の有無を確かめる
  • ティンパノメトリー: 鼓膜の動きを調べ、中耳に滲出液がたまっていないかを評価する
  • 気密耳鏡(ニューマチック・オトスコープ): 鼓膜に空気をあてて動きを観察し、滲出液の有無を確かめる
  • 聴力検査: 聞こえの程度を調べる。とくに滲出性中耳炎では難聴の程度や経過を把握するために役立つ
  • 画像検査: 慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎が疑われる場合などに、CTなどで状態を詳しく調べることがある

検査の内容は、急性か滲出性か、年齢、症状の重さ、これまでの経過によって一人ひとり異なります。

中耳炎の治療

中耳炎の治療は、タイプ・年齢・重症度によって異なります。診療ガイドラインでは、急性中耳炎は年齢・症状・鼓膜所見から重症度を判定し、それに応じて治療方針を決めることが示されています。

急性中耳炎では、まず痛みや熱をやわらげる対症療法を行います。軽症では、抗菌薬をすぐには使わず、数日のあいだ経過をみて自然な改善を待つ考え方がとられることがあります。症状が強い場合や改善しない場合には、抗菌薬を用います。抗菌薬は、すべての急性中耳炎に必要なわけではなく、必要な場面に絞って適切に使うことが、薬の効きにくい菌を増やさないうえでも大切とされています。痛みや発熱が強い・鼓膜の張りが強いといった場合には、鼓膜を小さく切って膿を出す鼓膜切開を行うことがあります。

反復性中耳炎(急性中耳炎をくり返すもの)では、一回ごとの治療に加えて、くり返しを減らす工夫が大切になります。背景にある鼻やのどの状態への対応、肺炎球菌ワクチンなどの予防接種、受動喫煙を避けることなどが役立ちます。それでもくり返す場合には、鼓膜換気チューブの留置が検討されることがあります。

滲出性中耳炎では、多くが時間とともに自然に改善します。そのため、まずは経過を観察しながら、背景にあるアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・アデノイドの腫れなどの治療を行うのが基本です。滲出液が三か月以上続く、両耳で聞こえにくさが続く、言葉の発達への影響が心配される、といった場合には、鼓膜に小さな管を入れて中耳の換気を保つ鼓膜換気チューブ留置術が検討されます。アデノイドが大きく関係している場合には、アデノイドの手術をあわせて行うこともあります。

慢性中耳炎(鼓膜に穴が残るもの)や真珠腫性中耳炎は、薬だけで治すことが難しく、鼓膜や中耳を修復する手術(鼓室形成術など)が必要になることがあります。とくに真珠腫性中耳炎は、放置すると骨を壊しながら進むため、専門的な評価と治療が必要です。これらの手術が必要と判断される場合は、専門の医療機関で対応します。

主なタイプと治療の考え方(概要)
タイプ経過の目安治療の中心
急性中耳炎数日〜対症療法を基本に、重症度に応じて抗菌薬。必要時に鼓膜切開
反復性中耳炎くり返す予防(ワクチン・受動喫煙回避・鼻の治療)。難治例で換気チューブ
滲出性中耳炎多くは三か月以内に改善経過観察と背景疾患の治療。遷延・難聴があれば換気チューブ
慢性・真珠腫性中耳炎持続・進行性手術(鼓室形成術など)を専門施設で検討

いずれのタイプでも、症状が軽くなっても自己判断で通院や治療をやめると、再発したり聞こえにくさが残ったりすることがあります。経過を見ながら方針を相談していくことが大切です。

受診の目安・注意したいサイン

次のようなときは、耳鼻咽喉科への受診をおすすめします。

  • 耳の痛み・発熱・耳だれがある
  • 聞こえにくさや耳のつまり感が続く、または聞き返しが増えた
  • 急性中耳炎をくり返している
  • かぜのあと、耳の症状だけが長く残っている

とくに、耳の後ろの強い腫れや赤み、顔の動かしにくさ(顔のゆがみ)、激しいめまい、高熱とともにぐったりしているといった様子があるときは、炎症が中耳の外へ広がるまれな状態が疑われます。様子を見ず、できるだけ早く医療機関を受診してください。

セルフケアと予防

  • 肺炎球菌ワクチン・インフルエンザワクチンなどの予防接種は、中耳炎の原因となる感染症の予防に役立つ
  • 家庭内の受動喫煙を避けることが、中耳炎の起こりやすさを下げることにつながる
  • 鼻を強くすすらず、片方ずつやさしくかむようにする
  • アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があるときは、その治療を続けることが中耳炎の予防にも役立つ
  • かぜの予防(手洗い・体調管理)が、かぜに続く中耳炎を減らすことにつながる

よくある経過・予後

急性中耳炎は、適切に対応すれば多くが改善します。一方で、治りきらないと滲出性中耳炎に移行して聞こえにくさが続くことがあります。滲出性中耳炎も多くは自然に改善しますが、長引く場合には聞こえの問題が残ったり、言葉の発達に影響したりすることがあるため、経過を見ながら必要に応じて治療を行います。慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎は、手術を含む専門的な治療が必要になることがあります。いずれのタイプでも、早めに状態を見極め、タイプに合った対応を続けることが、聞こえを守ることにつながります。

ガイドライン・参考情報

本ページは、耳鼻咽喉科領域の診療ガイドラインや学会の一般向け情報をもとに、耳鼻咽喉科専門医の監修のうえで作成しています。診断・治療の最終的な判断は、必ず医師による診察に基づいて行われます。

よくあるご質問

中耳炎は自然に治りますか?抗生物質(抗菌薬)は必ず必要ですか?
タイプによって異なります。急性中耳炎は、軽いものなら痛みや熱をやわらげる対症療法で改善することがあり、抗菌薬は症状が強い場合や改善しない場合に絞って用いるのが適切とされています。滲出性中耳炎は、多くが時間とともに自然に改善するため、まずは経過を観察します。いずれも、必要な治療は状態によって変わるため、自己判断で市販薬を続けず、鼓膜の状態を確認してもらうことが大切です。
急性中耳炎と滲出性中耳炎は何が違いますか?
急性中耳炎は、かぜなどに続いて急に起こり、耳の痛み・発熱・耳だれをともなうのが特徴です。滲出性中耳炎は、痛みや発熱は目立たず、中耳に分泌物(滲出液)がたまって聞こえにくくなるのが特徴で、本人が気づかないまま続くこともあります。急性中耳炎が治りきらずに滲出性中耳炎へ移行することもあり、二つは続けて起こることがあります。
子どもが中耳炎を何度もくり返します。心配です。
急性中耳炎を半年で三回以上、または一年で四回以上くり返す状態は反復性中耳炎と呼ばれます。とくに二歳未満は耳管の働きが未熟で、くり返しやすい時期です。集団保育や家庭内の受動喫煙などが関わることもあります。一回ごとの治療に加えて、ワクチンによる予防、受動喫煙を避けること、鼻の状態への対応などでくり返しを減らす工夫を行い、それでも難しい場合には鼓膜換気チューブの留置を検討することがあります。
滲出性中耳炎で、鼓膜にチューブを入れると言われました。必要ですか?
滲出性中耳炎の多くは自然に改善するため、まずは経過観察と背景にある鼻・のどの治療が基本です。そのうえで、滲出液が三か月以上続く、両耳で聞こえにくさが続く、言葉の発達への影響が心配される、といった場合に、中耳の換気を保つ鼓膜換気チューブ留置術が検討されます。必要かどうかは、聞こえの程度や経過、年齢などを踏まえて判断します。
中耳炎で聞こえが悪いと、言葉の発達に影響しますか?
滲出性中耳炎などで聞こえにくい状態が長く続くと、とくに言葉を覚える時期のお子さまでは、言葉の発達や日常の聞き取りに影響することがあります。だからこそ、聞こえにくさが続くときは経過を確認し、必要に応じて治療を行うことが大切です。多くは適切な対応で聞こえが回復します。
鼓膜を切開すると、癖になったり穴が残ったりしませんか?
鼓膜切開は、強い痛みや膿がたまっているときなどに、症状をやわらげる目的で行うことがあります。切開した穴は多くが自然にふさがります。くり返すことで癖になるというものではなく、必要性はそのときの状態に応じて判断されます。心配な点は、治療を受ける際に医師に相談してください。
中耳炎のとき、飛行機やプール・お風呂は大丈夫ですか?
気圧が大きく変わる飛行機の離着陸は、中耳炎の状態によっては耳の痛みが出やすくなることがあります。プールや入浴の可否は、鼓膜の状態(穴があるか、チューブが入っているかなど)によって異なります。タイプや治療の段階によって注意点が変わるため、受診した際に確認しておくとよいでしょう。
大人も中耳炎になりますか?
中耳炎は子どもに多い病気ですが、大人にも起こります。かぜに続く急性中耳炎のほか、鼻すすりの習慣や鼻・のどの病気を背景にした滲出性中耳炎、過去の中耳炎による慢性中耳炎などがみられます。聞こえにくさや耳のつまり感、耳だれが続くときは、年齢にかかわらず一度耳鼻咽喉科で相談することをおすすめします。

出典

監修・編集体制

編集:医承会グループ 医療情報編集委員会

  • 監修:早坂 あかね駒込駅前耳鼻咽喉科クリニック 駒込駅前耳鼻咽喉科クリニック 院長

    • 耳鼻咽喉科専門医
    • 身体障害者福祉法15条指定医
    • 補聴器相談医
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最終監修日:2026年6月

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