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メタボリックシンドローム — 内臓脂肪と重なるリスクを専門医がわかりやすく解説

メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドロームは、お腹周りに脂肪がついた「内臓脂肪型肥満」に、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上が重なった状態です。それぞれの異常が軽度であっても、複数が重なることで動脈硬化が急速に進み、心筋梗塞・脳梗塞といった命に関わる病気のリスクが大きく高まります。自覚症状がほとんどないまま進行するため、健診での指摘をきっかけに、早い段階から評価と生活習慣の見直しに取り組むことが大切です。

メタボリックシンドロームは、単独の「病気」というよりも、複数のリスク因子が同時に存在する「症候群」として捉えられます。健診で指摘されるケースが大半で、自覚症状はほとんどないため、定期的な評価と早期からの介入が重要です。日本における該当者と予備群を合わせた人数は、40〜74歳の男性で約2人に1人、女性で約5人に1人と推計されており、働き盛りの世代にとって最も身近な健康課題のひとつです。

内臓脂肪が病気を引き起こすしくみ

肥満には、脂肪がつく場所によって2つのタイプがあります。皮下脂肪型肥満は、お尻や太もも、二の腕など、皮膚のすぐ下に脂肪が蓄積するタイプで、外見上は分かりやすいものの代謝への悪影響は比較的少ないとされています。一方、内臓脂肪型肥満は、お腹の中(腸の周りや肝臓の周辺)に脂肪が蓄積するタイプで、外見からは判断しづらいものの代謝への悪影響が顕著です。

「お腹だけぽっこり出ている」「BMIは正常範囲なのに腹囲が大きい」といった場合は、内臓脂肪型肥満の可能性があります。痩せ型に見えても内臓脂肪が多い「隠れ肥満」も存在し、見た目だけでリスクを判断することはできません。

内臓脂肪細胞は、単にエネルギーを蓄える「貯蔵庫」ではなく、さまざまな生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌する「内分泌器官」として働いています。健康な状態の脂肪細胞からは、動脈硬化を抑制するアディポネクチンが分泌されますが、内臓脂肪が過剰に蓄積すると、このアディポネクチンの分泌が低下します。代わりに、血圧を上昇させるアンジオテンシノーゲン、インスリンの効きを悪くするTNF-α、血栓を作りやすくするPAI-1といった、健康を損なう物質の分泌が増加します。この変化が、高血圧・糖代謝異常・脂質代謝異常を同時に進行させ、動脈硬化を加速させる中心的なメカニズムと考えられています。

メタボリックシンドロームの診断基準

日本のメタボリックシンドロームの診断基準は、内臓脂肪の蓄積を示す「腹囲」が必須項目で、これに血圧・血糖・脂質の異常が2項目以上重なった場合に診断されます。この基準は2005年に日本内科学会など8つの医学系学会が合同で策定したもので、現在も用いられています。

メタボリックシンドロームの診断基準
項目基準
必須項目:腹囲男性 85cm以上/女性 90cm以上
追加項目①:血圧収縮期 130mmHg以上 または 拡張期 85mmHg以上
追加項目②:血糖空腹時血糖 110mg/dL以上
追加項目③:脂質中性脂肪 150mg/dL以上 または HDLコレステロール 40mg/dL未満

腹囲の基準を満たしたうえで、追加項目①〜③のうち2つ以上に該当するとメタボリックシンドロームと診断されます。腹囲は立位で軽く息を吐いた状態で、おへその高さで水平に測定します。CT検査で換算すると内臓脂肪面積100平方センチメートル相当で、内臓脂肪の蓄積を簡便に評価できる指標として採用されています。「男性より女性の基準値が大きい」のは、女性の方が皮下脂肪が多く、同じ内臓脂肪量でも腹囲が大きく出る傾向があるためです。

追加項目の基準値は、それぞれの疾患の診断基準よりも厳しめ(より低い数値)に設定されている点に注目してください。たとえば高血圧の診断基準は140/90mmHg以上ですが、メタボリックシンドロームでは130/85mmHg以上が該当します。糖尿病の診断基準(空腹時血糖126mg/dL以上)に対して、メタボリックシンドロームでは110mg/dL以上で該当します。これは、個別の疾患として治療を開始するレベルよりも早い段階で警告を出す仕組みになっているためです。なお、該当する項目の薬を服用中の場合は、その項目に該当するものとして数えます。

特定健診では、腹囲の基準を満たしたうえで、血圧・血糖・脂質のうち2項目以上で異常があると「該当」、1項目で異常があると「予備群」と判定されます。予備群はまだメタボリックシンドロームそのものではありませんが、生活習慣の改善が必要な段階であり、放置すると該当に進展する可能性があります。

なお、「メタボリックシンドローム」と「肥満症」は混同されがちですが、別の概念です。肥満症はBMI25以上の肥満に、糖尿病・高血圧などの肥満関連疾患が加わった状態を指し、BMIが基本指標となります。メタボリックシンドロームは腹囲(内臓脂肪)が基本指標で、BMIが正常範囲でも該当することがあります。両者を満たす場合も少なくありません。

なぜ問題か — 動脈硬化と全身へのリスク

メタボリックシンドロームの最大の問題は、複数の軽度の異常が重なることで動脈硬化が加速度的に進行することです。高血圧・高血糖・脂質異常の3つが重なった人は、いずれもない人と比べて心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが大きく高まることが、疫学データで示されています。それぞれの異常が「治療が必要なレベル」に至っていなくても、複数の重なりが大きなリスクとなる点が、メタボリックシンドロームという概念が重視される理由です。リスクは「足し算」ではなく、相互作用によって「掛け算」的に増えると考えられています。

メタボリックシンドロームが引き起こすのは心筋梗塞・脳梗塞だけではありません。近年の研究では、以下の疾患リスクとの関連も指摘されています。

  • 脂肪肝・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD):肝臓に脂肪が蓄積する状態で、放置すると肝硬変・肝がんのリスクとなる
  • 慢性腎臓病(CKD):高血圧・高血糖が腎臓の機能を徐々に低下させる
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS):内臓脂肪が首・喉周辺の構造に影響し、睡眠中の呼吸停止を起こしやすくする
  • 一部のがん(大腸がん・肝がん・膵がん等):慢性炎症やインスリン抵抗性を介してリスクが上昇する
  • 認知症:中年期のメタボリックシンドロームが将来の認知症リスクと関連するという報告がある

「メタボはお腹だけの問題」と捉えると見落としますが、実際には全身の臓器に影響が及ぶ可能性があります。一方で、内臓脂肪は皮下脂肪と比べて食事改善や運動による減少が早いことが分かっており、適切な生活習慣の改善によって3〜6か月での腹囲・数値の改善が期待できます。「短期間でも変化が出やすい」のは内臓脂肪の特徴であり、改善に取り組む上での希望でもあります。現在の動脈硬化の進行度は、血管の硬さや詰まりの程度を調べる検査で客観的に評価できます。

原因・リスク要因

メタボリックシンドロームの背景には、内臓脂肪が蓄積しやすくなる生活習慣と体質があります。主なリスク要因は次のとおりです。

  • 過食・エネルギーの過剰摂取(特に糖質・脂質の摂りすぎ)
  • 運動不足・身体活動量の低下
  • アルコールの過剰摂取
  • 喫煙(インスリン抵抗性を高め、動脈硬化を促進する)
  • 睡眠不足・不規則な生活
  • 加齢に伴う基礎代謝の低下
  • 遺伝的な体質(内臓脂肪がつきやすい傾向)

これらのうち、生活習慣に関わる要因は、本人の取り組みによって改善できる部分が大きいことが知られています。遺伝的な傾向があっても、適切な生活習慣によって発症リスクを大きく下げられます。

特定健診・特定保健指導との関係

特定健診(いわゆるメタボ健診)は、40〜74歳を対象に、メタボリックシンドロームに着目して行われる健康診断です。この健診でメタボリックシンドロームまたはその予備群と判定された方には、生活習慣の改善を目的とした特定保健指導が案内されます。特定健診・特定保健指導は2008年度に始まり、2024〜2029年度は第4期にあたります。第4期では、食事の影響を受けやすい中性脂肪について、空腹時と随時(食後)を区別して評価するなどの見直しが行われています。

特定保健指導には、リスクの程度に応じて2つのレベルがあります。動機付け支援は、リスクが少ない方(予備群レベルが中心)を対象に、原則1回の面談で生活習慣改善の計画を立て、3〜6か月後に成果を確認します。積極的支援は、リスクが複数ある方(該当レベルが中心)を対象に、初回面談に加えて3〜6か月間にわたり継続的に支援します。いずれも、医師・保健師・管理栄養士などが、食事・運動・喫煙・睡眠・飲酒などの生活習慣を個別に評価し、生活実態に合わせた目標設定とフォローを行います。

特定健診は市区町村が実施するものですが、企業に勤めている方の多くは勤務先の健診(職域健診)を受けています。職域健診の結果でメタボリックシンドロームと判定された場合も、特定保健指導の対象として案内されることがあります。職域健診と特定健診はどちらも特定保健指導の対象判定に用いられ、判定基準や指導内容は基本的に同じです。特定保健指導は「保健指導」であり、薬物治療を含む「医療」とは異なる枠組みで提供されます。指導の中で薬物治療が必要と判断された場合は、通常診療(保険診療)に切り替えて治療を行います。

改善・治療の進め方

メタボリックシンドロームの改善は、生活習慣の見直しが基本です。内臓脂肪を減らすことで、血圧・血糖・脂質の異常が同時に改善することが期待できるため、まず食事と運動から取り組みます。

食事の基本は、適正なエネルギー摂取と栄養バランスです。糖質・脂質の過剰摂取を見直し、野菜・魚・大豆製品・全粒穀物を積極的に取り入れます。具体的には、主食の量を見直す、野菜から先に食べる、揚げ物を控える、加糖飲料を水やお茶に置き換える、就寝前3時間以内の食事を避ける、といった工夫が挙げられます。アルコールは適量(純アルコールで男性20g/日、女性はそれより少なめが目安)にとどめ、休肝日を設けることがすすめられます。極端な食事制限ではなく、無理なく続けられる範囲で長期的に取り組むことが重要です。短期間で大幅に減量してもリバウンドで元の体重を超えてしまう「ヨーヨー現象」では、かえって代謝が悪化することが分かっています。

運動は、ウォーキング・ジョギング・水泳などの有酸素運動を週150分以上(1日30分×5日以上が目安)行うことが推奨されます。可能であれば、筋力トレーニング(自重運動でも可)を週2〜3回追加することで、筋肉量を維持しながら効率的に内臓脂肪を減らすことができます。運動が習慣化されていない場合は、通勤時に1駅分歩く、エスカレーターを階段に変えるなど、段階的に身体活動を増やすアプローチが現実的です。頭では分かっていても続かないのが生活習慣改善の難しさであり、小さな目標から始める、体重・腹囲を定期的に測定して見える化する、家族や仲間と一緒に取り組む、達成できた点に注目する、といった工夫が継続に役立ちます。

生活習慣の改善で目標に達しない場合、または個別の疾患(高血圧・糖尿病・脂質異常症)が治療基準に該当する場合は、薬物治療を併用します。薬物治療の判断は各疾患のガイドラインに沿って行われ、メタボリックシンドロームそのものに対する単独の保険適用治療薬は存在しません。各疾患の詳しい治療方針は、関連する疾患ページで解説しています。なお、肥満の程度が高度な場合や糖尿病を合併して減量による治療効果が見込める場合には、保険適用での肥満症治療が選択肢となることがあります。適応の有無は医師の診察によって評価されます。

経過・予後と受診の目安

メタボリックシンドロームは、早い段階で生活習慣の改善に取り組むことで、動脈硬化の進行を抑え、心筋梗塞・脳梗塞などのリスクを下げられる状態です。内臓脂肪は減らしやすいため、腹囲を数センチ減らすだけでも、複数の異常項目が基準内に戻ることが少なくありません。一方で、自覚症状がないことから改善の取り組みが後回しになりやすく、放置すると個別の生活習慣病が進行し、薬物治療が必要な段階へ移行します。

健診でメタボリックシンドロームまたは予備群と指摘された場合は、自覚症状がなくても、一度医療機関で評価を受けることがすすめられます。特に、腹囲が基準を超えていて血圧・血糖・脂質のいずれかにも該当がある場合、複数の項目に該当がある場合、健診結果が年々悪化している場合は、早めの受診が望まれます。受診の際は、健診結果のコピーを持参すると、過去のデータも含めた経時的な評価が可能になります。健診で指摘された段階を「複数の異常が重なる前に手を打つタイミング」と捉え、生活習慣の見直しと定期的な評価を続けることが、将来の健康を守る鍵となります。

予防・日常生活での注意点

メタボリックシンドロームの予防と改善には、日々の生活習慣の積み重ねが重要です。次の点を意識することがすすめられます。

  • 体重・腹囲を定期的に測定し、変化を記録する
  • 主食・主菜・副菜のそろった食事を心がけ、食べすぎを避ける
  • 週150分以上の有酸素運動と、こまめな身体活動を習慣にする
  • アルコールは適量にとどめ、休肝日を設ける
  • 禁煙する(喫煙は動脈硬化を強く促進する)
  • 十分な睡眠をとり、生活リズムを整える
  • 年に1回は健診を受け、腹囲・血圧・血糖・脂質の変化を確認する

メタボリックシンドロームは、高血圧・糖尿病・脂質異常症という個別の生活習慣病と密接に関わっています。これらはいずれも内臓脂肪の蓄積を共通の基盤とし、重なり合ってリスクを高めます。メタボリックシンドロームの改善は、これらの疾患の予防・治療の土台にもなります。それぞれの疾患の診断基準や治療の詳細は、関連疾患のページをご覧ください。

診療ガイドライン・最新の知見

このページの記載は、2005年に日本内科学会など8つの医学系学会が合同で策定したメタボリックシンドロームの診断基準、および厚生労働省の特定健診・特定保健指導(第4期・2024〜2029年度)、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」などに準拠しています。

なお、2024年には、国内の大規模な健診データの解析にもとづき、腹囲を必須項目としない新しい診断基準を提案する研究が報告されています。これは、腹囲が基準に満たない非肥満の方の中にも心血管疾患の高リスク者がいることを踏まえたものですが、現時点では正式な診断基準の改訂には至っていません。診断・治療の基準は今後の研究の蓄積により見直されることがあり、実際の診断・治療は一人ひとりの状態に応じて医師が判断します。

よくあるご質問

健診で「メタボ」と言われましたが、自覚症状がありません。放置してはいけませんか?
メタボリックシンドロームは自覚症状がほとんどないまま進行するのが特徴です。放置すると動脈硬化が静かに進み、ある日突然の心筋梗塞や脳梗塞として現れることがあります。健診で指摘された段階での評価と生活習慣の見直しが、将来の心血管疾患の予防に直結します。
「メタボ予備群」と言われた場合はどうすればよいですか?
予備群は、腹囲が基準を超え、かつ血圧・血糖・脂質のうち1項目で異常がある状態です。まだメタボリックシンドロームそのものではありませんが、放置すると数年以内に該当へ進展する可能性があります。予備群の段階で生活習慣の改善に取り組むと、進展を予防できる確率が高まります。「予備群だから大丈夫」ではなく「介入の効果が出やすいタイミング」と捉えることが大切です。
メタボと高血圧・糖尿病・脂質異常症は別々に治療するのですか?
メタボリックシンドロームは、複数のリスク因子が重なった状態の総称です。それぞれの疾患には別々の治療基準と薬物治療がありますが、基盤となる内臓脂肪の減少を目指すことで、複数の異常を同時に改善できる可能性があります。生活習慣の改善は、各疾患の治療に共通する土台となります。
ダイエットでメタボは改善しますか?
内臓脂肪は皮下脂肪と比べて減少しやすい性質があり、適切な食事改善と運動を3〜6か月続けることで、腹囲・血圧・血糖・脂質の各項目に改善が見られることが多くあります。腹囲を数センチ減らすことで複数の異常項目が基準内に戻る場合もあります。極端な制限ではなく、継続できる方法を選ぶことが重要です。
家族にメタボの人がいると、自分もなりやすいですか?
メタボリックシンドロームには、遺伝的な体質と生活習慣の両方が関与しています。家族に該当者や糖尿病・心血管疾患の方がいる場合、内臓脂肪がつきやすい体質を受け継いでいる可能性があり、より早い段階からの生活習慣への配慮が望まれます。ただし、遺伝的な傾向があっても適切な生活習慣によって発症リスクは大きく下げられます。
特定保健指導は必ず受けなければいけませんか?
特定保健指導は義務ではありませんが、生活習慣を見直す有効な機会です。医師・保健師・管理栄養士などが生活実態に合わせた目標づくりとフォローを行うため、「健診結果は届いたが、どう動けばよいか分からない」という段階の方にとって、具体的な一歩を踏み出す助けになります。
BMIは正常なのにメタボと言われました。なぜですか?
メタボリックシンドロームの必須項目は、BMIではなく腹囲(内臓脂肪)です。BMIが正常範囲でも、内臓脂肪が多く腹囲が基準を超えていれば該当します。痩せ型に見えても内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満」もあるため、見た目やBMIだけでは判断できません。

出典

監修・編集体制

編集:医承会グループ 医療情報編集委員会

  • 監修:石田 和也医承会グループ 理事長

    • 公衆衛生学修士(MPH/帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 修了)
    • 日本専門医機構認定 内科専門医
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最終監修日:2026年7月

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