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慢性胃炎 — ピロリ菌と胃がんリスクまで見据えた診療を(専門医監修)

慢性胃炎とは

胃の粘膜に炎症が長期間続いている状態です。一時的な暴飲暴食などによる急性胃炎と異なり、慢性胃炎の大半はピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染が原因で、数十年単位でゆっくり進行します。炎症が続くと胃の粘膜が痩せて薄くなる「萎縮性胃炎」に進み、さらに胃の粘膜が腸の粘膜に似た組織へ置き換わる「腸上皮化生」が起こることがあります。この段階まで進むと胃がんが発生しやすい状態になるため、慢性胃炎は「胃もたれの病気」であると同時に「胃がんのリスクを見積もる病気」でもあります。

なお、健診の内視鏡結果などで目にする「慢性胃炎」は内視鏡で見た粘膜の状態を指す言葉であり、症状の有無とは必ずしも一致しません。粘膜に炎症があっても無症状の方は多くいます。

症状

  • 胃もたれ、みぞおちの痛み・不快感
  • 食後の膨満感、少し食べるとすぐ満腹になる
  • 吐き気、食欲不振
  • 無症状(健診の内視鏡やピロリ検査で偶然見つかるケースも多い)

症状の強さと粘膜の炎症の程度は一致しないことが知られています。粘膜に明らかな異常がないのに同様の症状が続く「機能性ディスペプシア」という別の病態もあり、内視鏡で区別します。

原因・リスク要因

最大の原因はピロリ菌感染で、慢性胃炎の大部分を占めます。そのほか、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)の長期使用、強いストレス、飲酒・喫煙、まれに免疫の異常により自分の胃の細胞を攻撃してしまう自己免疫性胃炎があります。自己免疫性胃炎ではビタミンB12の吸収が障害され、貧血(悪性貧血)を合併することがあります。

診断・検査

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で粘膜の炎症・萎縮の程度と範囲を直接観察し、あわせて胃がんや胃潰瘍がないかを確認します。萎縮の広がりは胃がんリスクの見積もりに直結するため、内視鏡での評価が診療の出発点になります。ピロリ菌の検査(呼気試験・便中抗原・血液検査など)を組み合わせ、感染が確認されれば除菌治療の対象となります。貧血や自己免疫性胃炎が疑われる場合は血液検査を追加します。

治療

ピロリ菌が陽性の場合は、除菌治療が最も重要です。除菌により炎症の進行が止まり、胃がんのリスクを下げられることが示されています(詳細は「ピロリ菌感染」のページをご覧ください)。

症状に対しては、胃酸の分泌を抑える薬、胃の粘膜を保護する薬、胃の動きを整える薬などを症状のパターンに合わせて使い分けます。生活面では、規則正しい食事、腹八分目、脂っこい食事・香辛料・アルコールを控えること、禁煙、十分な睡眠が症状の軽減に役立ちます。

除菌後・治療後の注意

除菌に成功しても、それまでに進んだ萎縮や腸上皮化生が完全に元へ戻るわけではなく、胃がんのリスクはゼロにはなりません。萎縮の程度に応じて、除菌後も定期的な胃カメラでの経過観察が勧められます。「除菌したから安心」で検査をやめてしまうことが、いちばん避けたい落とし穴です。

受診の目安

胃もたれやみぞおちの不快感が2週間以上続く場合、市販薬を繰り返し使っている場合は、一度内視鏡での評価をお勧めします。体重減少、繰り返す嘔吐、黒い便、貧血の指摘、食べ物のつかえ感がある場合は、早めの受診が必要です。また、ピロリ菌の家族内感染は珍しくないため、ご家族に胃がんやピロリ菌感染の方がいる場合も、症状がなくても一度検査を受ける価値があります。

診療ガイドライン・出典

このページの記載は、日本消化器病学会の患者向け情報および日本ヘリコバクター学会「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」に準拠しています。

よくあるご質問

健診で「萎縮性胃炎」と言われました。放っておいて大丈夫ですか?
萎縮性胃炎は、多くの場合ピロリ菌の長年の感染によって胃の粘膜が痩せた状態で、胃がんが発生しやすい土壌とされています。まずピロリ菌の検査を受け、陽性なら除菌治療を行うこと、そして萎縮の程度に応じて定期的に胃カメラで経過を見ることが大切です。症状がなくても放置しないことをお勧めします。
慢性胃炎と機能性ディスペプシアはどう違いますか?
どちらも胃もたれやみぞおちの不快感を起こしますが、慢性胃炎は粘膜に実際に炎症がある状態、機能性ディスペプシアは内視鏡で明らかな異常がないのに胃の働き(運動や知覚)の問題で症状が出る状態です。治療のアプローチが異なるため、まず内視鏡で粘膜の状態を確認して区別することが出発点になります。
症状がないのに治療は必要ですか?
症状の有無と粘膜の状態は一致しません。ピロリ菌感染による慢性胃炎は、無症状でも萎縮が進行し胃がんリスクが上がっていくため、感染が確認されれば症状がなくても除菌が勧められます。一方、症状を抑える薬は症状がなければ不要です。「除菌」と「症状の治療」を分けて考えるのがポイントです。

出典

  • 日本消化器病学会 患者さんとご家族のためのガイド「胃炎」関連情報
  • 日本ヘリコバクター学会「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」

監修・編集体制

編集:医承会グループ 医療情報編集委員会

  • 監修:泉 貞言すぎやま内科 院長

    • 日本消化器病学会専門医
    • 日本肝臓学会専門医
    • 日本消化器外科学会専門医
    • 日本消化器外科学会指導医
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最終監修日:2026年8月

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